ホームレス資料センター

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9/7シンポジウム「生活困窮者の就労支援を考える」報告

9/7シンポジウム「生活困窮者の就労支援を考える」報告

写真は当日の佐藤洋作氏の発表。一番手前は韓国のパク氏

写真は当日の佐藤洋作氏の発表。一番手前は韓国のパク氏

第一部はイ・ウネ氏による講演で、民主化後急速に発達した韓国・ソウル経済の中で出てきた課題にどのように対応してきたかを話して頂きました。
韓国の経済が100名の村だったらという仮定で経済を見てみると、経済活動をしているのは59名で、このうち上場企業(輸出型の大企業;サムスン・ヒュンダイなど)に勤めるのはたった1名になる、たった100名中1名が勤める企業がうまくいけば、自分の生活も良くなると信じているのか?という問いかけから始まりました。

同様に、第二部のパネルディスカッションでもパク・チュンソプ氏がダントツの経済規模を持つソウル特別市とその周辺に位置する忠清南道を例に取り上げながら、経済開発の実態が、本来あるべき姿からかけ離れた形をとっている現実を説明、それはいみじくもその前にイ・ウネ氏が説明した、おかしな国の経済学を裏付けるようなデーターでした。
忠清南道のGRDP(域内総生産)は伸びているのに、忠清南道の就業者数は減っているのです。
このような経済発展は明らかに問題を持っています。
そこで忠南社会的経済支援のため各界が協力して、持続可能発展、社会的発展チームを創ったそうです。
同時に日本ではあまりなじみの無い、自活企業・社会的企業の働きを紹介してくれました。

次に日本からは厚生労働省の友藤課長から新たな生活困窮者支援制度の創設の説明があり、船岡氏からは大阪の行政という現場から、地域や地方自治の視点で「生活困窮者支援制度や労働行政の在り方を考える」と題して、大阪パーソナルサポート事業から見えてきた生活困窮者支援の諸課題の報告の一部を紹介して頂きました。

日本の民間からは佐藤洋作氏が父母らが創った塾を母体に不登校児のための支援を過去40年にわたって展開してき、そのなかで中間的な働き場創りを行っていると報告してくださいました。
佐藤氏が紹介なさったある若者の「結果として、自分はひよっとしたら、この社会で歩いていけるのかもしれないというか、という風に思えたのが何よりの気づきだったというように感じております。」という言葉は聞く者に深い感動と今この社会が直面している現実を垣間みさせてくれました。

京都の高橋尚子氏より、京都自立就労サポートセンターの就労支援の取り組みを紹介して頂き、又自ら立ち上げたCommunity Cafeでの就労体験等や京都府ジョブトライ事業/CSR型ステップアップ事業などの中間的就労を実施しておられる様子を見せて下さいました。

最後に北九州ホームレス支援機構の森松氏より、北九州における生活困窮者に対する生活自立を基盤とした就労準備、社会的就労提供、子供に対する学習支援のための伴走型支援の説明がありました。
伴走型支援に関してはすでに先端を行っている感のある北九州ホームレス支援機構でしたが、子供の(生活保護受給家庭の)学習支援に取り組みはじめているのは、印象的でした。
路上のホームレスの数は減りましたが、貧困は目に見えない形で日本を侵食しつつあり、それは家庭の教育にあらわれていると思います。
貧困の持つ負のスパイラルには教育がからんでいるので、この試みは子供の教育支援を通して世代間に繋がる負のスパイラルを断ち切る可能性を見られるかもしれないと感じさせました。
そして、何よりも「事業の終了した後も、居場所のない状態をつくらない」という部分は人は一人では生きていけないという本質的理解を表している気がしました。

当日の参加者からのご質問

本来であれば、各パネラーに会場の参加者からの質問が取り上げられ、それが話し合われるはずでしたが、本当に残念なことに時間がなく15名の方からのご質問は会場では話し合われませんでしたので、ここでいくつかをご紹介してみたいと思います。


☆若者ホームレス、若年の不安定居住者に対する、中間的就労を組み入れたパーソナル・サポート型の自立支援を7年間やってきましたが、中間的就労と一般就労の間には、入り口だけではなく入ってからのから壁も立ちはだかっていることを実感してきました。
中間的就労から一般的就労に移行した際に、支援者側と企業側双方に障害者支援策のようなジョブコーチ等の支援施策が必要になると考えていますが、どうでしょうか?

コメント:
ライフサイクル別、問題別の就労支援制度を横断的にすることが急務である。
これに取りかからないと、就労困難者の就労は進まない。国が対象者を何らかの訓練を必要とする者という視点を変え、1人の労働者、市民としての権利を高めるための施策を現場の活動を反映させたものとして創り上げねばならない。


☆生活困窮者の就労支援の中で、安易にNPO等の民間との連携をしていくなどと記載されているが、民間団体がそのような支援事業を行っていく、行いやすいサポート、体制創りも必要なのではないでしょうか?

☆日本では自治体、福祉事務所などが仕事が増えるのを嫌がって貧困者を押しつけあったり、サービスをよくすると人が集中してしまうために横並びになりがちです。韓国では如何でしょうか?

コメント:
韓国の場合、1996年から市民運動団体及び福祉関係団体が進めてきた‘脆弱階層生産共同体育成活動’を調査し、それを政策的に反映する論議をし始めた。
保健福祉部のモデル事業として‘地域自活支援センター’事業を始めた(全国5箇所指定、脆弱層共同体仕事創出及び創業支援)。
1998年金大中政権は‘生活の質向上企画団’を設立しこの地域自活支援センタ事業を評価した。
2000年‘生活保護法’が‘国民基礎生活保障法’に改正され、政府から生活費を支給される人が働く機会と仕事場をつくる‘自活給与’を提供する事業を始めた。
さらに全国的に地域自活センターが設立され、公務員が仕事を通じて’貧困脱出支援業務’を法的根拠をもって推進するようになった。
つまり、市民運動団体の実験的な事業開発とそれを制度化する努力の結果だと思う。


☆韓国ではアメリカとの自由貿易協定を結びましたが、その後、韓国内ではどのような状況がでてきているでしょうか?
韓米FTA以降、農業、中小企業、国内の自営業者などは経済的危機が日常化されている。
グローバル市場に進出している大企業には役に立つと思う。それで農業や自営業者支援政策は強化されている。
農村地域の圏域開発支援事業、または同種の自営業者5名が設立した事業組合に事業資金2億ウォンを支援する制度などがある。
農民、自営業者は 危機に対抗するために、協同組合、協同物流社会的企業などを設立したりしている。

☆そして今後経済が国際的に自由化していく中で社会的企業への必要性は高まってくるのでしょうか?

コメント:
経済自由化の基になった新自由主義の拡大により、大企業と中小企業の間の所得格差が拡大された。
また階層間の所得及び仕事の質の両極化など多くの社会問題が発生している。
そして、このような両極化問題にたいする対案として‘より社会統合的で経済民主主義を実践できる経済手段はないのか’という政策的な課題があり、社会的企業、協同組合の社会的必要に関する共感が大きくなっていくと思う。


☆社会的企業を広げるということは、経済が国際化していくことに対して、どのようなことを発言し、意味をもってくるのか?

コメント:
社会的企業は内需景気の活性化にまず注目する。
国民は所得両極化と未来に対する不安により消費をしない、ソウルではない非首都圏地域経済はもっと悪くなる状況に陥る。
そして、社会的企業のように地域住民が協同出資し、需要がある事業体をつくり、地域内で循環できる付加価値を生産、雇用を増やすのはすごく意味があるという評価をしている。
韓国経済は今まで輸出中心の大企業中心の発展をしてきた。
このような成長は市民経済に役に立たない‘雇用なき成長‘をもたらしたと思う。


☆日本でも自殺の問題は深刻ですが、韓国で永久賃貸アパートに入居した地域の方の中で10名の方が自殺されたのは、どのような理由と分析しておられますか?

コメント:
韓国も日本のように高齢化、核家族化が進展し、高齢者の‘孤独死’が増加している。
しかし、永久賃貸アパートでの多くの自殺は地域コミュニティの崩壊によるものだと思う。
つまり、近隣の助け合いがない‘無縁社会’になったからだ。所得と生活の両極化は相対的な貧困と剥奪感、孤立感を与える主な原因であると思う。


☆社会的企業育成法の制定という形で、政府が脆弱階層への支援に乗り出している点では、とても進んでいるという印象を受けます。
市民の方々は、これらの事業や、そこで働く人々(当事者・サポートするスタッフ)に対しては、どのような意識を持っているのでしょうか?(まだ「特別なこと」という感じなのか、「自然なこと」としてみているのか…)

コメント:
2007年社会的企業育成法が施行されるまで、市民と政策担当者との共感を得るために、市民団体は様々な努力をした。
私も社会的企業を支援する財団(共に働く財団)でTV放送局と協力し、‘失業克服キャンペーン’が放送されるように、常に資料提供と現場紹介をした。
また、番組のレギュラーとして参加し、全世界の社会的企業の事例を紹介したりした。
このような努力と法制定の結果、現在社会的企業に対する認知度は50%を超えている。
‘脆弱階層がプライドを持って働く仕事場’、‘良い企業良い仕事’という世論をつくることができた。
そして、2009年からソウル市ではバスと地下鉄広告を利用し、社会的企業と協同組合を広告している。
それにより、ソウル市民の認識と支持がもっと高くなった。(N)

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